
香典を、現金ではなくスマートフォンやカードでお渡しする。少し前なら驚かれた光景が、いま現実の選択肢になり始めています。
私は、香典がキャッシュレスになること自体を、冷たいとも失礼とも思いません。変わってよいのは方法です。変えてはいけないのは、大切な方を悼み、ご家族を思う弔意です。
ただし、便利だからと一つの方法を押しつけてはいけません。ご家族の意向を確かめ、参列する方が迷わない言葉で案内し、選べる余地を残す。新しい仕組みほど、葬儀社の説明と心配りが問われます。
香典のキャッシュレス化は、どこまで進んでいるのか
2026年6月2日、葬祭関連サービスを手がける企業が、葬儀会場の受付端末でキャッシュレスにより香典を受け取る仕組みを、同年5月から始めたと発表しました。
同社が、過去5年以内に葬儀や告別式へ参列し、香典を渡した経験のある20歳から69歳の男女300人を対象に行ったインターネット調査では、日常生活で約84%がキャッシュレス決済を利用する一方、直近の葬儀では約89%が現金で香典を渡していました。また、キャッシュレスで弔意を示すことについて、「選択肢としてあってもよい」「条件によっては受け入れられる」とした人は約半数でした。
これは一企業による限られた調査であり、社会全体の考えを断定できるものではありません。それでも、日常の支払い方と葬儀の慣習の間に、迷いが生まれていることは見えてきます。
便利さより先に、ご家族の意思を置く
香典は、単なる支払いではありません。故人様への弔意と、ご家族を支えたいという気持ちを形にしたものです。だから、手段だけを切り離して「早い」「簡単」と語ると、大切な意味がこぼれ落ちます。
まず確かめるべきなのは、ご家族が香典を受け取るのか、辞退するのか、どの方法なら安心できるのかという意思です。家族葬だから一律に香典を辞退する、あるいは一律に受け取るという決まりはありません。ご家族ごとに答えが違います。
花水木が大切にする一施工一担当制の考え方も、こうした意思を途中で取りこぼさず、最初から最後まで責任を持ってつなぐための仕組みです。方法が新しくなっても、誰がご家族の思いを受け止めるのかは曖昧にしてはいけません。
新しい受付方法ほど、先に決めておきたいこと
- 香典を受け取るのか、辞退するのか
- 現金とキャッシュレスのどちらを案内するのか
- 参列者へ、誰が、どの言葉で正式に伝えるのか
- 利用する仕組みの記録方法や個人情報の扱いをどう確認するのか
- 操作が難しい方や現金を希望する方に、別の選択肢を残すのか
サービスごとに利用条件や取扱方法は異なります。分からない点を分かったふりで進めず、事前に確認し、難しい言葉を使わずに伝えることが必要です。香典や参列時の基本を確認したい方は、花水木の葬儀の豆知識も参考にしてください。
選択肢を増やすことと、強制しないことは両立できる
現金を用意する時間がない方、遠方にいる方、手書きが難しい方にとって、キャッシュレスは助けになる可能性があります。一方で、スマートフォンの操作に不安がある方や、従来の形で手渡したい方もいます。
どちらかを古い、新しいと決めつける必要はありません。大切なのは、ご家族と参列者の双方が、弔意を置き去りにせず選べることです。
葬儀プランや送り方を考える時も同じです。形式を先に決めるのではなく、誰と、どのように感謝を伝えたいのかを先に考える。会場を検討する場合は、広さや場所だけでなく、受付や案内をどのように支えてもらえるかも含めて、式場・会館の情報を確認してほしいと思います。
家族で今、三つだけ話しておく
キャッシュレスを使うかどうかまで、今すぐ決める必要はありません。ただ、次の三つは話しておくと、いざという時の迷いを減らせます。
- 香典を受け取るか、辞退するか
- 受け取る場合、参列者へどの方法を案内したいか
- その意向を、家族の誰が把握しているか
事前に落ち着いて整理したい方は、事前相談・資料請求で、分からないことからお話しください。決まっていないことがあっても構いません。決めるために相談するのです。
よくあるご質問
キャッシュレスで香典を渡しても失礼になりませんか?
一律に失礼と決まっているものではありません。ただし、ご家族や葬儀の案内で認められている方法を選ぶことが大切です。正式な案内がない場合は、自己判断せず確認してください。
家族葬では香典を持参した方がよいですか?
家族葬でも、香典を受け取る場合と辞退する場合があります。葬儀の形式だけでは判断できないため、訃報やご案内に記されたご家族の意向を確認するのが基本です。
急な参列で、香典の案内が分かりません
葬儀社や案内をした方へ確認して構いません。ご家族の意向が最優先です。差し迫った状況で葬儀全体について相談したい場合は、お急ぎの方へのご案内をご覧ください。
弔意を置き去りにしない進化を
葬儀の形や道具は、時代とともに変わります。けれど、大切な方へ感謝を伝え、ご家族を思う気持ちは、効率だけで測れるものではありません。
私たちは、新しい仕組みをただ追いかけるのではなく、それが目の前のご家族にとって本当に助けになるのかを考えます。変わる方法を丁寧に説明し、変わらない弔意を守る。その責任を、これからも一件一件の現場で果たしていきます。

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