葬儀が終わった翌日から、実家の問題が始まることがあります。
親が一人で暮らしていた実家。もう住む人はいない。けれど、片付ける気力も、売却や解体を考える余裕もない。何から手をつければよいか分からず、鍵を閉めたままにしているご家族も少なくありません。
私の結論は、最初の30日で実家を売る、捨てると決める必要はないということです。
最初にするべきことは、家を傷ませず、遺言、相続人、財産、負債を確認し、次の判断ができる状態を整えることです。
「最初の30日」は法律上の期限ではありません
30日というのは、法律上の締切ではありません。葬儀直後の混乱の中で、大きな処分をせず、実家と相続関係を守るための初動期間です。
一方、相続放棄は、原則として自分のために相続が始まったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申し立てる必要があります。詳しくは、裁判所「相続の放棄の申述」で確認できます。
借金や保証債務が分からず、相続放棄の可能性が少しでもある場合は、家財の売却、大量廃棄、形見分け、家の解体契約を先に進めないでください。財産の処分が相続の承認と判断される可能性があるためです。
1日目から3日目は、家を守り現状を残す
この段階では片付けより、事故と盗難の防止を優先します。
- 鍵の本数と保管者を記録する
- 玄関、窓、勝手口の施錠を確認する
- 建物内外を写真や動画で残す
- 雨漏り、漏水、割れた窓、倒れそうな塀を確認する
- 冷蔵庫内の腐敗物など、緊急性のあるものだけ処理する
- 通帳、印鑑、権利証、保険証券、固定資産税通知書を動かす前に記録する
特定の一人が勝手に持ち出したと思われないよう、重要物を移動する場合は、写真、数量、保管者、保管場所を家族で共有します。
4日目から7日目は、遺言と相続人を確認する
実家をどうするか決める前に、誰に決める権限があるのかを確認します。
- 自筆証書遺言や公正証書遺言の有無
- 法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用していないか
- 法定相続人は誰か
- 借入金、保証債務、未払金がないか
- 土地や建物に抵当権、共有持分、未登記部分がないか
封印された自筆証書遺言を見つけた場合は、勝手に開封せず、家庭裁判所の手続きを確認してください。
この時期に家財を一気に捨てるのは早すぎます。必要な書類や財産の手掛かりまで失う可能性があります。
8日目から14日目は、空き家としての事故を防ぐ
電気、ガス、水道は、すべてを一律に即解約するのではなく、今後の管理方法に合わせて判断します。防犯設備や定期的な通水、清掃に電気や水道が必要になる場合もあります。
- 各事業者へ契約者の死亡と名義、支払方法を確認する
- ガスの元栓、電気のブレーカー、水道メーターを記録する
- 保険会社へ契約者の死亡と空き家になることを伝える
- 郵便受けを定期的に確認する
- 雑草、庭木、ゴミを放置しない
- 近隣へ緊急連絡先だけを伝える
故人様宛ての郵便物は、家族からの申出で家族宅へ転送してもらうことはできません。日本郵便も、亡くなった受取人宛ての郵便は差出人へ返還すると案内しています。詳しくは、日本郵便の公式FAQで確認できます。
郵便受けに届いた請求書や通知は差出人を記録し、必要な契約先へ死亡と今後の送付先を連絡してください。
15日目から21日目は、不動産の全体像を調べる
固定資産税通知書、名寄帳、登記事項証明書などを照合し、土地と建物の名義、共有者、抵当権、未登記建物の有無を確認します。
2026年2月からは、亡くなった方の名義で登記された全国の不動産を一覧で確認する手掛かりとして、所有不動産記録証明制度も始まっています。ただし、未登記建物などは別途確認が必要です。
遠方で定期的に通えない場合は、換気、通水、雨漏り、防犯、庭木、郵便受けなどを確認する空き家管理サービスも選択肢になります。
22日目から30日目は、処分ではなく判断表を作る
この段階で初めて、今後の選択肢を同じ条件で比べます。
- 家族の誰かが住む
- 当面は空き家として管理する
- 売却する
- 賃貸する
- 解体して土地を活用する
それぞれについて、固定資産税、保険料、管理費、修繕費、売却可能性、相続人の意向を書き出します。
相続登記は、2024年4月から義務化されています。不動産を相続で取得したことを知った日から、原則3年以内に申請が必要です。「亡くなった日から必ず3年」ではない点にも注意してください。詳しくは、法務省「相続登記の義務化」で確認できます。
空き家を放置すると何が起きるのか
空き家は、誰も住んでいなくても管理が必要です。雨漏り、害虫、庭木の越境、不法侵入、外壁や屋根材の飛散などで、近隣へ影響を与える可能性があります。
管理状態が悪化して「管理不全空家」などへの指導に従わず勧告を受けると、土地の住宅用地特例が適用されなくなり、税負担が増える可能性もあります。国土交通省の空き家対策特設サイトでも、早めの管理を呼びかけています。
専門家は役割で選んでください
- 弁護士:相続放棄、借金、遺言、相続人間の対立
- 司法書士:相続登記、相続人申告登記、不動産名義の整理
- 税理士:相続税、準確定申告、不動産の税務評価
- 不動産会社:売却や賃貸の査定と方法
- 自治体の空き家窓口:空き家バンク、管理、改修、除却支援
一人の事業者だけにすべてを判断してもらうのではなく、問題に合った専門家を選ぶことが大切です。
花水木が葬儀後まで向き合う理由
葬儀が終わったからといって、ご家族の困り事が終わるわけではありません。実家、遺品、相続、納骨。むしろ葬儀後から、初めて直面する問題もあります。
花水木は、法律や税務の判断を代わりに行うことはできません。しかし、何を先に確認し、どの問題をどの専門家へ相談するべきかを整理することはできます。
悲しみの中にいるご家族へ「早く片付けてください」と迫るのではなく、取り返しのつかない処分を防ぎ、次の一歩を一緒に考える。それも葬儀社の大切な役割だと私は思っています。
葬儀や供養の選択肢を考える際は、葬儀・供養の豆知識、葬儀プラン、各会館のご案内も参考にしてください。花水木の姿勢は花水木が選ばれる理由でご紹介しています。整理段階のご相談は事前相談からお問い合わせいただけます。
よくあるご質問
Q. 葬儀後すぐに遺品整理を始めてもよいですか
A. 腐敗物の処理など緊急対応は必要ですが、大量廃棄や売却は遺言、相続人、負債を確認してから進めてください。相続放棄を検討する可能性がある場合は、先に弁護士へ相談することをおすすめします。
Q. 電気、ガス、水道はすぐに止めるべきですか
A. 一律にすべて止めるのではなく、防犯、通水、清掃、漏水などを考えて決めます。各事業者へ契約者の死亡、名義、支払方法、停止と継続の条件を確認してください。
Q. 空き家の相談は誰にすればよいですか
A. 相続登記は司法書士、相続放棄や対立は弁護士、税金は税理士、売却や賃貸は不動産会社が主な相談先です。最初の窓口が分からない場合は、自治体の空き家相談窓口も利用できます。
実家は、ただの建物ではありません。故人様が生き、ご家族の時間が積み重なった場所です。
だからこそ、悲しみの勢いで全部を捨てるのではなく、守るもの、確認するもの、次へつなぐものを見極める時間が必要です。
葬儀はやり直せません。そして、処分してしまった家や思い出も簡単には戻せません。ご家族が後悔しない判断へ進めるよう、花水木は葬儀の後にも静かに寄り添い続けます。

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