相続登記の義務化という言葉を、最近よく耳にするようになりました。
不動産を相続したことを知った日から3年以内に登記をする必要があり、2024年4月1日より前に発生した相続で、まだ登記が済んでいないものについても、2027年3月31日までという期限が示されています。
これは法律の話です。
けれど私は、現場に立つ葬儀社として、この話を単なる手続きの話だけで終わらせてはいけないと思っています。
終活で本当に残すべきものは、財産そのものだけではありません。残された家族が迷いすぎないための意思と、感謝と、段取りです。
なぜ相続の話が、葬儀の現場と無関係ではないのか
大切な人を亡くした直後、ご家族は冷静ではいられません。
葬儀の日程を決める。誰に連絡するかを考える。宗教者や火葬、安置、式場、食事、返礼、費用のことを限られた時間の中で決めていく。愛する人を失った深い悲しみの中で、それをやらなければならない現実があります。
そして葬儀が終わったら終わりではありません。名義変更、預貯金、保険、年金、税金、不動産、供養のことが続きます。
花水木でも、葬儀後の手続きに不安を感じる方へ向けて、葬儀の豆知識や各種ご案内を通じて、少しでも見通しを持っていただけるよう努めています。
現場に立っていると、本当にそう感じる瞬間があります。葬儀そのものよりも、その後に始まる現実の重さに立ち尽くしてしまうご家族がいるのです。
終活で大切なのは、家族に宿題を残しすぎないことではないでしょうか
私は、終活を「死ぬ準備」という暗い言葉だけで捉えたくありません。
むしろ、自分が生きた証をどう残すかを考える時間だと思っています。
自宅はどうするのか。預貯金や保険はどこにあるのか。土地や建物の書類はどこにあるのか。葬儀はどのくらいの規模を望むのか。お墓や納骨はどう考えているのか。誰に連絡してほしいのか。
こうしたことを何も話さないまま別れが来ると、残された家族は悲しみの中で、正解のない判断を迫られます。
これは綺麗ごとではありません。
何も決めていないことが悪いのではなく、何も分からない状態のまま家族に全部を背負わせることが、結果として大きな負担になるのです。
葬儀の形式についても同じです。家族だけで静かに送るのか、親しい方にも声をかけるのか。家族葬、一日葬、火葬式など、形にはそれぞれ意味があります。
大切なのは、どれが正しいかではありません。その方らしさと、ご家族の気持ちが置き去りにならないことです。
相続登記の義務化が突きつけているのは、手続きの期限だけではありません
私は、このニュースが社会に突きつけているのは、「放っておいても何とかなる時代ではない」という現実だと思っています。
昔のように、家のことは誰かが知っている、親族の誰かがまとめてくれる、という前提は、もう成り立ちにくくなっています。
単身世帯が増え、家族の形も変わりました。身寄りのない高齢者等への支援が課題として注目されるのも、当然の流れだと思います。
それなのに終活が、「とりあえずエンディングノートを書けば安心」「資料を取り寄せたから大丈夫」という雰囲気で終わってしまうことがあります。
私はそこに、少し辛口かもしれませんが、危うさを感じています。
書類を集めることが目的ではありません。家族が困らない形まで落とし込めているかどうかが大事なのです。
葬儀社が本当に向き合うべきなのは、不安の入口を整理することです
だからこそ、地域の葬儀社は、ただ式を執り行うだけの存在ではいけないと私は思います。
もしもの時に何から始めればよいのか。どこに安置するのか。どの式場が使いやすいのか。費用はどのように比較すればよいのか。葬儀の後にはどんな手続きが控えているのか。
そうした不安を、元気なうちから相談できる場所であるべきです。
花水木では、事前に話しておきたい方へ事前相談・資料請求の窓口を設けています。急な時にはお急ぎの方への案内もあります。
不安は、分からないから大きくなります。分かるところから一つずつ整理すれば、少しずつ小さくできます。
私たちは、一日一家族貸切、一施工一担当制、そして比較しやすい料金設計を大切にしています。それは宣伝のためではありません。悲しみの中にいるご家族が、余計な混乱を抱えずに済むようにするための仕組みです。
費用の分かりやすさも、残される人への思いやりです
終活でよく聞かれるのが、葬儀費用の不安です。
私は、費用の話を避けることが誠実だとは思っていません。むしろ、悲しみの中にいるご家族が迷いすぎないように、分かりやすく比較できることが大切です。
花水木の葬儀プランは、形式ごとに考え方を整理しやすいようにしています。また、なぜその仕組みを大切にしているのかは、花水木が選ばれる理由にもつながっています。
もちろん、葬儀は金額だけで決めるものではありません。けれど、費用の不透明さが不安を増やしてしまうなら、それは現場側がきちんと向き合うべき問題です。
今日からできる終活は、大げさなことではなく小さなメモからです
難しい書類を一気に作る必要はありません。
まずは、家族に伝えたいことを一枚の紙に書いてみる。通帳や保険、土地や建物に関する書類の場所をまとめる。葬儀について「派手にしなくていい」「この人には連絡してほしい」など、今の気持ちを残す。
それだけでも、残される人の負担は変わります。
相続登記の義務化は、期限に追われるためだけのニュースではありません。家族が困らないように、今できる準備を考えるきっかけです。
よくあるご質問
Q. 葬儀の事前相談をすると、すぐに決めなければいけませんか?
A. いいえ。事前相談は、すぐに葬儀内容を決定する場ではありません。もしもの時に慌てないよう、流れや選択肢を知っておくための時間です。
Q. 相続や不動産のことも葬儀社に相談してよいのでしょうか?
A. 専門的な判断は司法書士や税理士などの専門家につなぐ必要があります。ただ、葬儀後にどのような手続きが出てくるのか、入口の整理として相談していただくことはできます。
Q. 家族葬にするか、火葬式にするか迷っています。
A. 参列される方の範囲、宗教者との関係、ご家族の気持ち、費用感によって考え方は変わります。形式名だけで決めず、どのように感謝を伝えたいかを一緒に整理することが大切です。
大切な人を送ることにも、葬儀の後の手続きにも、正解は一つではありません。だからこそ、不安なことがあれば、元気なうちに、落ち着いているうちに、少しだけでも話しておくことが大切だと私は思います。
「まだ早い」ではなく、「今だからこそ落ち着いて考えられる」。そう思えた時が、終活を始めるいいタイミングです。
花水木は、これからも一件一件の葬儀に、同じものは一つもないと思って向き合います。葬儀の迷いも、その後の不安も、まずは言葉にするところから一緒に整理していきたいと思っています。
葬儀は、亡くなった人へ感謝を伝える場であり、命がつながっていることを再確認する場です。だからこそ私は、見送られる人が最後に家族へ残すものもまた、思いやりであってほしいと願っています。これからも現場で、その思いにまっすぐ向き合っていきます。
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