
「この人は、どんなふうに送ってほしかったのだろう」。
葬儀の打ち合わせで、ご家族がこの問いの前に立ち止まることがあります。近しい家族だから何でも分かる、とは限りません。大切なことほど、元気なうちは話しにくいものです。
私は、本人を支えるとは、周囲が代わりに答えを出すことではないと思っています。本人の言葉を聴き、選べる情報と考える時間を整えること。その姿勢は、日々の暮らしでも、人生の最終段階でも、葬儀でも変わりません。
成年後見制度の見直しから、何を受け取るべきか
法務省は2026年6月30日、同月17日に成立し、24日に公布された成年後見制度などの見直しを含む改正法について公表しました。
成年後見制度の見直しでは、現行の後見と保佐を廃止して補助の仕組みに一元化し、本人にとって必要な範囲や期間で利用できるようにすることが柱とされています。なお、この部分はまだ施行前で、公布日から2年6か月以内の政令で定める日に施行されます。
制度の細部は法律の専門家が扱う領域です。ただ、葬儀社として私が強く感じるのは、支援する側が多くを決めるのではなく、本人の意思を中心に置くという考え方の重さです。
なぜ葬儀社が「本人の意思」を考えるのか
葬儀は、ご家族のための時間であると同時に、亡くなった方がどう生き、何を大切にしてきたかを受け取る時間です。
けれど現場では、「家族だけで静かに送りたかったのか」「友人にも声をかけてほしかったのか」「宗教者とのご縁をどう考えていたのか」が分からず、ご家族が迷うことがあります。
そのとき、葬儀社が「普通はこうです」と決めてしまってはいけない。私たちは主体ではなく、支える側です。地域の慣習や葬儀の形式を分かる言葉で伝えたうえで、本人が残した言葉と、ご家族の気持ちを丁寧に聴かなければなりません。
花水木が一施工一担当制を大切にする理由の一つも、話の途中で想いをこぼさないためです。最初に聴いた希望を、最後のお見送りまで同じ担当者が受け止める。それは効率よりも、本人とご家族の意思を守るための仕組みです。
本人の意思は、書類だけに残るものではありません
「何も書いていないから、希望は分からない」と決めつける必要はありません。
よく聴いてみると、本人の意思は日々の言葉や暮らし方の中にも残っています。人付き合いを大切にしていた。華美なことは好まなかった。好きな花や音楽があった。親族とのご縁を大事にしていた。そうした一つひとつも、その人らしい見送りを考える手がかりです。
近しい方だけでゆっくり感謝を伝えたいという希望なら、家族葬という選択肢があります。ただし、家族葬という名前だけで内容が決まるわけではありません。誰と過ごしたいか、何を残したいかを聴いて、初めてそのご家族の形になります。
元気なうちに言葉を残せるなら、エンディングノートの書き方を参考に、次のようなことから始めてみてください。
- 誰に見送ってほしいか
- 宗教やお寺との関係をどうしてほしいか
- 好きな写真、花、音楽は何か
- お墓や納骨について伝えておきたいことはあるか
- 相談してほしい人や連絡先は誰か
一度書いた希望が、ずっと同じとは限りません。気持ちや家族の状況が変わったら、書き直していい。意思を尊重するとは、一度の言葉で本人を縛ることでもないのです。
家族は、本人の答えを一人で背負わなくていい
本人の希望を聞いていなかったからといって、ご家族を責めることはできません。認知機能や体調の変化で、もう十分に話せないこともあります。家族の中で意見が分かれることもあります。
そんなときこそ、分かっている事実と、家族それぞれの気持ちを分けて整理することが大切です。葬儀の前後に何を確認するかは、花水木の葬儀の豆知識や葬儀後の手続きに関する案内も手がかりになります。
成年後見を含む制度と葬儀社の役割については、以前の身寄りのない高齢者を地域で支えるために、葬儀社ができることでも触れました。何でも葬儀社が抱え込むのではなく、必要な方を適切な支援先へつなぐ姿勢が欠かせません。
制度や契約に関わる判断は、自治体の窓口や法律の専門家など、内容に合う相談先へ確認してください。葬儀の希望や家族の迷いを整理したいときは、事前相談・資料請求を話し始めるきっかけとして使っていただけます。
よくある質問
成年後見制度の新しい仕組みは、もう始まっていますか?
成年後見制度の見直しに関する部分は、2026年7月時点では施行前です。2026年6月24日の公布から2年6か月以内に、政令で定める日に施行される予定です。個別の利用や手続きは、最新の公的情報や専門窓口で確認してください。
エンディングノートがあれば、本人の希望はすべて伝わりますか?
大切な手がかりになりますが、遺言書とは役割が異なります。葬儀や供養への思いは家族とも共有し、財産や契約など法的な扱いが関わる事項は専門家へ確認することが大切です。
本人に葬儀の話を切り出しにくいときは、どうすればよいですか?
最初から細部を決めようとせず、「もしもの時に家族が迷わないよう、好きな花や会ってほしい人だけ教えてほしい」と、答えやすい話から始めてみてください。本人が話したくない気持ちも尊重し、急がせないことが大切です。
支援とは、本人から選ぶ力を取り上げることではありません。本人が自分の答えに近づけるよう支え、その言葉を家族が受け取れるようにすることです。
葬儀も同じです。私たち葬儀社が答えを押しつけるのではなく、亡くなった方が残した言葉、暮らし方、大切にしてきた人や物を、ご家族と一緒にたどる。その先に、その人らしい「ありがとう」の時間が生まれます。
人は、生きた証をさまざまな形で残します。花水木は、その証を急いで型にはめず、本人とご家族の声に耳を澄ませる葬儀社であり続けます。

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