「線香」と言われて、その見た目、形が思い浮かばない方はそう多くないでしょう。
日本においては「推古3年(西暦595年)の4月、淡路島に沈水(ちんすい)が漂着した」と『日本書紀』に記されており、これが線香(お香)に関する最古の記録になります。
仏壇やお墓参りの際には当たり前のように線香をあげますが、線香をあげるという行為にはどのような意味が込められているのでしょうか。
宗派によって線香のあげかたにも違いがあります。
ここでは線香のもつ意味や宗派別の違いなどについて解説します。
線香をあげる意味とは
線香をあげることの意味というのは、実は四十九日法要の前後で変わってくるのです。基本的に四十九日の間、絶えず線香を焚く行為には「食香(じきこう)」。つまり「故人が食べ物に困らないように」という意味があります。
仏教においては四十九日後、故人はあの世への旅を終えて仏様になるとされています。これにより、これ以降は「仏様になった故人と心を通い合わせる」という意味合いに変わるのです。
また線香の香りを嗅ぐという行為は自分自身を清め、またその空間そのものを清めるという意味もあります。
線香の主な種類
「線香」と聞いて多くの方が思い浮かべるのは細い棒状のものではないでしょうか。それはまさしく線香の代表的なものですが、実は色々と種類があるのです。一部ご紹介いたします。
匂い線香
最もポピュラーな種類です。17世紀に中国から伝わった香の一種で、タブの木の樹皮を主原料に、白檀(びゃくだん)・沈香(じんこう)・伽羅(きゃら)などの香木、香料を調合して練り上げ、細い棒状に成形したものです。実に香の需要の90%以上を占めます。特に伽羅は香木の最高峰とされているため希少価値が高く、高値で取引されています。
杉線香(墓線香)
杉の葉を主原料とし、どこか懐かしい香りが魅力で、火のつきが良く、折れにくいのが特徴です。その名前の通り、お墓参りなどの野外用として重宝されます。種類としては水車杉線香・屋久杉線香があります。
単寸線香
一般的な線香の長さは14㎝くらいですが、単寸線香は長さ9cm程度と短いのが特徴です。一般的な長さのものを使用する場合、香炉が小さいと灰が外に落ちて焦がす恐れがあるため、単寸線香を選ぶのも良いでしょう。
長尺線香
寺院などで経文を唱えたり坐禅を組んだりするときに、その時間を計る目安のために焚かれる線香です。一本が燃え尽きるまでをお勤めの時間とするため、長さや太さは様々です。一般的な線香と比べて長くて長時間もつのが特徴です。
渦巻き型
渦巻き型線香は通夜から満中陰(四十九日)まで、煙を絶やさないために作られたものです。満中陰まで付きっきりで線香番をすることは、家人にとって大変な負担となるためにこの線香を用います。先に説明した長尺線香よりもはるかに長持ちし、種類にもよりますがおよそ半日程度もちます。
円錐型
円錐型の線香の特徴は短い時間に芳香を広げてくれることです。下にいくほど燃える面積が広くなるので、香りも徐々に強くなります。また灰がそのままの形で残るので散らばる心配がありません。
仏壇やお墓で使用する以外にも香りを楽しむためのお香として見かけることも多いでしょう。
電子線香
近年広まりつつあるものです。一般的な線香は火を使うため火事への不安がありますが、電子線香(LED線香)は電池やコンセントで点灯するため安全です。
おもちゃのような精度の低いものを想像される方もいるでしょう。しかし最近の電子線香は本物の線香と見紛う精巧さです。また線香の香りや煙が立つことを忌避する方に電子線香は好まれます。
線香の起源
香料を人類が利用しはじめた歴史は古く、紀元前3,000年頃のメソポタミアでは神事で香りの高い木を焚いていたといいます。
古代エジプトでは、ミイラの防腐剤として香料を使用していました。
香料の活用はインドにも伝わり、酷暑の地で防臭・殺菌の用途で用いられており、インドは沈香・白檀などの香料の産地であり、仏教発祥の地でもあったため、お香は穢れを祓い、心身を清浄にするために用いられておりました。
中国の高僧、鑑真和尚が来日した際には、お香の調合技術も伝えられ、当初は貴族の間でお香の文化が広がったとされています。この頃の線香は非常に高価で、公家や一部貴族しか入手できなかったようです。
その後、お香は匂いを楽しむ作法として発展、茶道や華道と同様に「香道」ができます。
仏事で使う線香も中国から伝えられ、その生産技術は日本に広く浸透し、その後江戸時代になる頃には一般庶民も使うようになり、現在にいたります。
宗派別にみる線香のあげ方
続いて、宗派別の違いをご紹介いたします。例えば真言宗では線香を立てますが、浄土真宗においては寝かせる、など宗旨宗派により線香の扱いにも違いがあるのです。
ただし地域によって特色が見られることも多くあり、ここでご紹介している様式と異なる場合もあります。
真言宗・天台宗
奥に二本、手前に一本の逆三角形になるように立てます。
浄土宗
基本は一本を香炉の中央に立てます。複数立てる場合は寄せて立てます。
浄土真宗
香炉の口径に収まる長さに折り、火がついている方が左側になるように寝かし置きます。
長さをある程度保ったまま寝かせるために「長香炉」または「寝かせ香炉」とよばれる長方形の香炉が使われることがあるのも特徴です。
臨済宗・曹洞宗
一本を香炉の中央に立てます。
日蓮宗
一本または三本を立てます。一本の場合は香炉の中央に立て、三本の場合は真言宗や天台宗と同じく奥に二本、手前に一本の逆三角形になるように立てます。
仏壇に線香をあげる時の作法
親族や知人のお宅に伺ってお線香をあげる。この時になってどのようにしたら良いのかわからないと気づく、というのはよくあるお話です。基本的には形式にとらわれず、まずお気持ちが第一ではありますが、正しい作法を知っていればなお良いですね。
- 左手に数珠を持つ
- 仏壇の前に座布団がある場合、座布団の手前で遺族に一礼
- 仏壇の正面に座り、一礼して合掌
- ろうそくに火を灯し、線香に火をつける
- 線香から煙が出ていることを確認し、香炉に立てる(浄土真宗は横倒しに)
- おりん(仏壇の横に置いてある音を鳴らす仏具)を一度鳴らしてから合掌
- 仏壇に一礼し、座布団から降りて少し下がり最後にもう一度遺族に一礼
以上が一連の作法ですが、こちらも地域によって違いが見られる場合があります。まずは故人を偲ぶお気持ちを第一に、御遺族に寄り添う気持ちで線香を手向けましょう。
まとめ
6世紀後半に偶然淡路島に流れ着いた流木を、島民が薪としてこれまた偶然竃にくべたところから我が国のお香の歴史が始まりました。
葬儀での「香典」も元々は仏前に線香を供えることを意味していましたが、現在では線香の代わりとして現金が渡されるようになりました。このように線香は日本における長い歴史の中で、様々なかたちで時代の移り変わりとともに根付いてきたのです。
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