「逆さごと」とは、葬儀に関連する物事を、通常とは反対のやりかたで執り行うことを示します。日常の生活の中で逆さの事をすると縁起が悪いということを耳にしたことがあると思いますが、なぜ縁起が悪いのか、逆さごとの由来や実際の儀式などを詳しく解説します。
昔から死は非日常のものであり、死の世界は現実の世界とは異なる真逆の世界であると信じられてきました。
「逆さごと」は亡くなった方に着せる死装束を通常は左前に着せますが、右前に着せたり、寝かせる布団や枕の位置を北枕にしたり、など様々なことを通常とは真逆にすることを指します。そのため「逆さごと」は日常生活においては、縁起が悪いと言われ、そのような行為は避けられてきました。
「あの世とこの世」死者の世界と現世を区別するために行うという説や「死」ということを日常から切り離すという説もあります。
逆さごととは?どんな意味があるの?
逆さごとは、あの世とこの世を区別する行いのことを指す用語であり、日本独特の概念であり、宗教的な流れからくるものではありません。
逆さごとは生きている人のためではなく、亡くなった方のために行うものと言う説もあります。あの世とこの世では、昼夜が逆転しているため、昼間の明るい時に迎い入れてもらおうという風習です。
あの世ではこの世と全てが逆のため、亡くなったばかりの方は慣れるのに苦労します。そのため、故人が困らないように全て逆にして迷わないようにという心遣いでもあるとされています。
神道でも逆さごとはある?
北枕に関しては、お釈迦様の亡くなった際の涅槃(ねはん)が由来になったともいわれています。お釈迦さまは入滅される際、頭を北に向けて横たわりました。お釈迦様の入滅とは悟りを開いたと言う事なので、仏教的には北枕は不吉といえません。
また、仏教だけでなく、神道にも北枕や逆さ屏風、逆さ水の風習があります。
浄土真宗に関して
同じ仏教でも浄土真宗の教えでは、亡くなった方は全てがすぐに成仏すると考えられているため、逆さごとは行いません。あの世に旅立って裁きを受けるという概念がないからです。
そのため、枕元もしくは胸元に置く守り刀も浄土真宗の場合は必要ないとされています。
葬儀の儀式で実際に行う逆さ儀式
屏風を逆さに立てる逆さ屏風
亡くなった方の枕元に逆さに屏風を立てます。これは逆さ屏風と呼ばれるものです。地域によっては、このような風習が残っている地域もあります。
死装束(経帷子)を左右逆に着せる
仏教での一般的な死装束は経帷子(きょうかたびら)で巡礼者や修行僧の着物です。それは亡くなった方は成仏するために、浄土へ旅立つと考えられているからです。
最近では経帷子にこだわらず、故人が生前愛用した洋服を着せることもありますが、着物の場合は衿のの合わせを左前にするのが一般的です。
実は昔は身分の高い方の着方は、左前でした。そのため、神仏に近い存在となった亡くなった方に敬意を表して左前にするのが始まりとも言われています。
北枕
お釈迦様が入滅した時に頭を北向きにし、額を西方向に向き、右脇を下にしていたとされています。お釈迦様の入滅時と同じ状況にすることが故人への最高の敬意とされているからです。(北枕が困難な場合は西枕にします。)
湯灌の際の逆さ水
湯灌の際に故人の身体をぬるま湯でぬぐいます。その際、お湯に水を注ぐのではなく、水にお湯を注いで温度調整をすることが逆さ水です。
川下に向かって水をすくう逆さ柄
昔は湯灌で使用する水をすくう際にも逆さごとがありました。川上ではなく、川下に向かって水をすくうのですが、それは逆さ柄と呼ばれています。
縦に結ぶ縦結び
死装束の紐を結ぶ際、通常の結び方とは違う縦結びにします。
逆さ布団
逆さ着物と似ていますが、布団の上下を逆にかけることを逆さ布団といいます。
夜間の葬儀
現代日本では、夜に通夜、お葬式は昼間に行われますが、昔はみんな仕事をすませてから夜に行われていました。
仕事の都合もあるでしょうが、あの世とこの世は昼夜も逆転しているから、故人が昼にあの世に逝けるようにあえて夜に行ったという説もあるようです。
まとめ
逆さごとは縁起が悪いというイメージがあります。例えば、うっかり左前で着物を着てしまった場合「それは死人の着方」と言われます。
しかし、左前は貴人を真似た風習であるともいわれており、不吉という間違ったイメージが強くなりすぎてしまっている面もあります。
逆さごとは、禍を避けるためだけではなく、亡くなった方の成仏を手助けするための風習であり、そうした思いやりの心を葬儀では大切にしたいものです。
現代では、古来の習わしに基づいたものを使わなくなってきたこともあり、少しずつ変化しつつあります。
しかし、古来の風習を気にされる方はまだまだ多いように思います。故人の供養に関することなので、家族や親族など身近な方たちと相談しながら決めていくことをおすすめします。
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