家族や大切な人の最期に向き合うにあたり、人の「死亡」とは、どのような状況のことなのか、判断するのは誰なのか、考えたことはありますか?
また、災害や様々な理由で行方不明になった方の判断基準はどうなるのか、「死亡」と「脳死」は何がちがうのかなど、気になっている方は多いのではないでしょうか。
今回の家族葬の花水木のコラムでは、「人の死亡の基準」について解説します。
死亡の判断基準とは?
人の死の判断基準として「死の三徴候」と言われるものがあります。
①呼吸停止
②心拍停止
③瞳孔の対光反射の停止
の3つです。
人の死亡を判断する際に、この3つの確認をすることが法律で定められているわけではありませんが、現在、国内の医療現場ではこの「死の三徴候」により死の判定を行っている場合がほとんどです。
死亡の判断は誰がするの?
日本国内では、人の死亡を判断できるのは「医師」のみと法律で定められています。素人が、前記した「死の三徴候」を判断するのは難しいと思いますが看護師など医療関係者であっても医師以外が死亡宣告することは認められていません。よって、自宅での看取りや搬送中など、病院以外の場所で死亡した場合でも、最終的に死亡判断するのは医師となります。死亡診断書や死体検案書の作成も医師にしか出来ません。
その為、「死の三徴候」が揃ったとしても、その場に医師が立ち会っていない場合、医師が直接、死を確認した時点を死亡時刻としている場合が多いです。
社会死とは?
「社会死」とは、医師以外の救急隊員が「社会死の6つの基準」に則り、人の死亡を判断することです。
「社会死の6つの基準」とは、
(1)意識レベルが300であること。
(2)呼吸が全く感ぜられないこと。
(3)総頚動脈で脈拍が全く触知できないこと。
(4)瞳孔の散大が認められ、対光反射が全くないこと。
(5)体温が感ぜられず、冷感が認められること。
(6)死後硬直又は、死斑が認められること。
※(消防実務質疑応答集「救急業務において傷病者が明らかに死亡している場合の一般的な判断基準」から抜粋)
の6つの基準です。
(1)の意識レベル300とは、「痛みや刺激に対する反応が全くない状態のこと」をさします。上記6つの基準を全て満たすと救急隊員が判断した場合は、医師の診断が無くても死亡しているとされ、すぐに病院に搬送されることなく警察へ引き継がれます。
行方不明者の死亡判断は?
ここまで、病院や自宅での看取り、救急搬送など、ご遺体がある場合の死亡の判断について解説して参りました。では、ご遺体がない状況、行方不明や失踪の場合はどうなるのでしょうか。
このような、「災害などでご遺体が見つからない」、「行方不明になり生死が分からない」などの場合の死亡判断は、「認定死亡」「失踪宣告」という制度を使用し行います。これらは法律により定められている制度で、ご遺体がない状況でも死亡したとみなして、相続など死後の手続きを行えるようになります。
「認定死亡」とは、戸籍法89条を根拠とし、火事や大きな事故などに巻き込まれえ遺体が見つからないときに調査にあたった官公庁が、各庁の規定に則り、死亡したと判断するのが妥当とした場合、死亡と推定される制度です。例えば、海上保安庁管轄の海難の場合は、最低でも3ヶ月以上見つからない場合が最低の条件となっています。しかし、認定死亡になってしまっていても、本人が生きている証明が出来れば直ぐに取り消しが出来ます。
「失踪宣告」とは、民法30条~32条に記載されており、「普通失踪」と「危難失踪」に分けられます。「普通失踪」は、何らかの事情、状況で行方不明になり家族などが7年以上連絡を取れず生死が分からない場合、「危難失踪」は、戦争や船舶の沈没、震災などの死亡の原因になる危難に遭遇し、その後1年間以上の期間生死が分からない場合に、適用されます。どちらも家族など利害関係人が家庭裁判所に申し立てをし、普通失踪の場合は3か月以上、危難失踪の場合は1か月以上の期間、裁判所が調査後、生存の届け出などがない場合、死亡を宣告します。「失踪宣告」の場合は、家庭裁判所に宣告されると、死亡したとみなされてしまう為、宣告後、生存していた場合は、本人か利害関係者が裁判所に申立てをし、宣告取消ししてもらう必要があり、すぐに取消すことが出来ません。
混同されやすい脳死になった場合
では、よく耳にする「脳死」とは、どのような状況なのでしょうか。
「脳死」とは、脳幹を含む、脳全体の機能が失われて回復しない状態のことです。世界の多くの国でも日本と同じ定義で「脳死」を定めており、「脳死」=「人の死亡」としている国も多くあります。しかし、日本で「脳死」が人の死として適用されるのは、脳死下での臓器提供を前提としている場合のみで、臓器提供の意思や家族の承諾がない場合は「脳死」=「人の死亡」とは成りません。「脳死」の場合は、薬剤や人工呼吸器などでしばらくの間、心臓を動かし続けることが出来ます(多くの場合、数日で心停止に至ります)。その為、臓器提供を前提としない場合は、前記した「死の三徴候」に当てはまらない為、日本では臓器提供を前提とする場合を除き、「脳死」=「人の死亡」とは判断されません。
臓器提供については下の家族葬の花水木コラムをご覧ください
「臓器移植と問題点について考えよう」
まとめ
人の死亡の判断は基本的には医師のみにしか出来ません。自宅などで家族が亡くなった可能性がある場合は、直ぐにかかりつけ医への連絡や、救急車を呼ぶことが大切です。また、「もしも倒れた時には蘇生措置をしないで欲しい」などの内容を家族に伝えている方もいるかもしれません。しかし、かかりつけ医などに頼んでおり、倒れた際にかかりつけ医が駆け付けた場合などを除き、大半の場合は、倒れた直後は体温がある為、「社会死の6つの基準」が満たされず、救急隊員による蘇生措置が行われることになることは知っておきましょう。
家族や大切な人が危篤や死亡となった際に落ち着いて対応できる方は少ないと思います。もしもの時に、少しでも落ち着いて対応できるよう基礎知識を持っておくと安心かもしれません。家族が自宅で亡くなった際の対応や、危篤の際の対応については下記のコラムをご覧ください。
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