遺言を電子データで作れる時代が近づいています。では、パソコンやスマートフォンに自分の希望を書いておけば、それだけで家族は迷わなくなるのでしょうか。
私は、制度が便利になることと、想いが伝わることは別だと思います。
終活には、財産を法的に残す準備と、葬儀や供養への希望を家族に伝える準備の両方が必要です。どちらか一方だけでは、残された家族が判断に迷う場面が生まれます。

「デジタル遺言」は、もう使える制度なのでしょうか
2026年6月24日、「民法等の一部を改正する法律」が公布されました。法務省の公表によると、改正には、電磁的記録などで作成し、法務局で保管する「保管証書遺言」の創設が含まれています。
ただし、この新しい遺言制度はまだ施行前です。保管証書遺言に関する規定は、公布の日から3年以内の政令で定める日に施行されます。現時点で、スマートフォンのメモやパソコンの文書を保存しただけで有効な遺言になるわけではありません。
新制度でも、本人確認や法務局での保管など、法律で定められた方式に沿うことが前提です。具体的に作成する際は、その時点の法務省の案内を確認し、内容に応じて司法書士や弁護士などの専門家へ相談することが大切です。
デジタル化という言葉の印象だけで判断せず、公式情報で条件を確かめる。この姿勢は、葬儀の情報を選ぶ時にも共通します。花水木の事前相談で担当者に聞きたい質問も、画面上の情報を家族の具体的な判断へつなげるための確認項目をまとめています。
遺言書だけでは、葬儀の迷いをすべて減らせません
遺言は、相続などに関する意思を法的な形で残すための大切な手段です。一方で、葬儀の現場では、法律とは別の判断が短い時間に重なります。
- 誰に訃報を伝えるのか
- どのような規模や形式で見送るのか
- 宗教や菩提寺との関わりをどうするのか
- 大切にしてきた習慣や、家族に残したい言葉は何か
こうした希望は、遺言書の有無だけでは分からないことがあります。家族が「本人ならどうしてほしかっただろう」と考え続けることになるのです。
だから私は、終活は安い葬式を探すことだけではないと考えています。終活の本質は、自分の情報と意思を、家族が受け取れる状態にしておくことです。
法律の文書と家族へのメモは、役割を分けて考える
財産に関する意思は、制度に沿った遺言として整える。葬儀、供養、連絡先、家族への言葉は、エンディングノートや手紙、家族との会話で共有する。この二つは競合するものではなく、役割が違います。
たとえば、家族葬を望む場合でも、「家族だけ」が誰を指すのかは家庭によって違います。親族以外の親しい友人に知らせたい方もいます。家族葬と一般葬の違いを知り、参列範囲まで話しておけば、ご家族は希望を具体的に受け取りやすくなります。
葬儀形式や連絡範囲、宗派などを書き出す時は、家族葬の希望を残すための整理方法も一つの手がかりになります。デジタルで残す場合は、端末のロックやデータの所在も考え、重要なIDやパスワードの管理方法は家族へのメモと分けるなど、安全面への配慮も必要です。
葬儀社にできるのは、家族の判断を整理することです
葬儀は、同じ形式を選べば同じ時間になるものではありません。故人様の生き方も、ご家族の関係も、伝えたい感謝も一件ごとに違うからです。
私たちが打ち合わせで大切にしているのは、専門用語を並べることではありません。何を今日決めるのか。何は後から考えられるのか。本人の希望と家族の事情をどう重ねるのか。一つずつ順序をつけ、分かる言葉でお伝えすることです。
家族葬の流れを事前に知るだけでも、残しておきたい情報は見えやすくなります。また、形式ごとの違いはお葬式のスタイル・プランで確認できます。大切なのは、画面を見て終わるのではなく、自分の希望を家族が分かる言葉に置き換えることです。
今日からできる「二つの準備」とは
一つ目は、財産や相続について、誰に何を相談するかを決めることです。新制度の施行を待つ場合も、いま利用できる遺言の方式を検討する場合も、公式情報と専門家の確認を土台にしてください。
二つ目は、家族に伝えたい葬儀や供養の希望を、三項目だけ書くことです。「連絡してほしい人」「望む見送り方」「家族に伝えたい言葉」。最初から完璧な終活ノートを作る必要はありません。
制度は意思を守る仕組みです。会話は、その意思に込めた想いを家族へ渡す時間です。
よくあるご質問
Q. スマートフォンに書いた遺言は、今すぐ法的に有効になりますか?
スマートフォンに保存しただけでは、新設される保管証書遺言にはなりません。新制度は施行前であり、施行後も法務局での保管など所定の方式が前提です。作成時点の公式情報を確認してください。
Q. 遺言書に葬儀の希望も書けば、家族への相談は不要ですか?
遺言と葬儀の希望は役割が異なります。葬儀は限られた時間で判断が続くため、希望の内容だけでなく、どこに記録したかを家族と共有しておくことが助けになります。
Q. 家族と終活の話を始める時、何から伝えればよいですか?
まずは、連絡してほしい人、望む見送り方、家族に伝えたい言葉の三つからで十分です。制度や形式が分からない部分は、公式情報や専門家、葬儀社への相談で整理できます。
法的な遺言と葬儀希望のメモを分けたうえで、保存場所、更新日、家族が見つけられる状態まで整理したい方は、事前相談・資料請求でお声がけください。葬儀に関する部分を、家族が受け取れる情報へ一緒に整えます。
保存方法が紙からデジタルへ広がっても、最後に意思を受け取るのは人です。
葬儀は、亡くなった人への感謝を伝え、命のつながりを確かめる場です。その時間を守るために、法律で残すことと、言葉で伝えることを分けずに考えてほしいと思います。
花水木は、制度の説明だけでは届かないご家族の迷いに向き合い、故人様の意思とご家族の想いをつなぐ準備を、これからも丁寧に支えていきます。

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