真言宗は、空海(弘法大師)によって開かれた大日如来を本尊とする仏教宗派の一つです。空海ゆかりの四国八十八カ所霊場があるため、徳島県では最も寺院数が多く馴染みの深い宗派と言えます。そんな真言宗について解説していきます。
真言宗とはどんな宗教?
真言宗は13ある仏教宗派のうちの一つで、平安時代初期に唐で密教を学んだ空海(弘法大師)によって開かれた仏教宗派です。秘密として扱われている教義が師から弟子へ伝授される宗教で真言密教とも言われています。
本尊は大日如来
真言宗本尊は大日如来です。
「大日如来は宇宙そのものであり、その宇宙を動かすエネルギーでもある」とされています。また全ての徳を備えており、「全ての仏は大日如来が姿を変えたものである」とも考えられています。そのため、真言宗の寺院でも大日如来以外の本尊(阿弥陀如来、薬師如来など)を祀っているところもあります。
大日如来は宇宙そのものですから姿はありませんが、仏として表現される際は髪を高く結い上げ宝冠を被り、ブレスレットや装身具を付けています。
「マントラ」とは
「マントラ」もまた大きな特徴の1つです。マントラとは日本仏教で「真言」と訳された言葉で、サンスクリット語で『文字・言葉』という意味です。仏の真実の言葉・秘密の言葉とも言われ、仏の教えが込められた功徳ある言葉とされています。
マントラには経典や宗派によってさまざまなものがあります。
大日如来のマントラは、
【おん ばざらだと ばん(金剛界)】
【おん あ び ら うん けん(胎蔵界)】
があります。マントラと共に手元で組んでいる印も違います。
また光明真言の、
【おん あぼきゃ べいろしゃのう まかぼだら まに はんどま じんばら はらばりたや うん】
は、大日如来の加護をお願いするマントラです。
真言宗の歴史
空海(弘法大師)はさまざまな霊場を巡り修行を行っているとき、『大日経』に出会います。大日経とは真言宗三部経の1つです。ここに密教の真髄が書かれていることに感銘を受け、習得には師からの伝授が必要であることを知り、唐に行くことを決意します。平安初期に空海は遣唐使に随行し、密教を学ぶために唐へ渡りました。そこでのちに師匠となる恵果和尚(えか/けいかわじょう)に出会います。恵果和尚は大勢いる自らの弟子の中から、空海を正式な密教の継承者として選びました。そして恵果和尚から密教の奥義を学び、空海は胎蔵界・金剛界の両部灌頂を受けたただ一人の継承者となりました。
その後空海は、密教経典や密教法具、曼荼羅を日本に持ち帰って全国行脚を行い、真言宗を広めていきました。
古義真言宗・新義真言宗・真言律宗
真言宗は大きく分けて、古義真言宗・新義真言宗・真言律宗の3つに分かれます。
古義真言宗
高野山真言宗・・・金剛峰寺(和歌山県)
東寺真言宗・・・教王護国寺(京都府)
御室派・・・仁和寺(京都府)
大覚寺派・・・大覚寺(京都府)
善通寺派・・・総本山善通寺(香川県)・大本山随心院(京都府)
醍醐派・・・醍醐寺(京都府)
泉涌寺派・・・泉涌寺(京都府)
山階派・・・進修寺(京都府)
中山寺派・・・中山寺(兵庫県)
須磨寺派・・・須磨寺(兵庫県)
真言三宝宗・・・清荒神清澄寺(兵庫県)
信貴山真言宗・・・朝護孫子寺(奈良県)
新義真言宗
智山派・・・智積院(京都府)
豊山派・・・長谷寺(奈良県)
新義真言宗・・・根来寺(和歌山県)
真言律宗
真言律宗・・・総本山西大寺・大本山宝山寺
長い歴史を経て、現在は50の宗派に分かれています。そのうち、主な宗派は上記の16宗派、その総本山が18あり、真言宗十八本山と呼ばれています。
真言宗の教えとは
密教
師から弟子に伝える秘密の教えを「密教」といいます。広く誰にでも明らかにする教えである顕教(けんぎょう)と対する物とされ、言葉だけでは分からない物事の真理や仏への道を説いたものです。そして、身口意(しんくい)という人間の三つの働き(三密)において、手に印を結び、口に真言を唱え、心を静めて三昧の境地に入ることによって即身成仏できる、と説いています。他の仏教が長い修行の末に成仏へと至るのに対し、現世で肉体を持ったまま一気に仏の境地に至るということです。
この密教の修行には、体の修行である身密・言葉の修行である口密・心の修行である意密の三つがあり、これらをまとめて『身口意の三密修行』を言います。
即身成仏
真言宗の教えである『即身成仏』とは、仏と同じように行動し、心を清く保つことで、誰でも仏になれるというものです。仏教で人間が究極の悟りを開き、現世における肉身のままでもそれが仏であると考えるのです。これは空海が著した『即身成仏儀』に、六大・四曼・三密の三点から即身成仏に至る手法が記されています。
まず「六大」とは森羅万象の根源である、地・水・火・風・空・識を指し、これが大日如来であり、宇宙(法界)であり、人であるとされるのが真言密教の思想です。
また「四曼」とは大曼荼羅・三昧耶(さんまや)曼荼羅・法曼荼羅・羯磨(かつま)曼荼羅のことでこの四つを合わせて四種曼荼羅、四曼と言います。
曼荼羅(まんだら)
最後に「曼荼羅」とは、サンスクリット語の音訳で、『丸いもの』や『本質を有するもの』という意味があります。漢字表記そのものに意味はないとされています。
曼荼羅は密教の悟りである宇宙の真理や仏を並べて描き、視覚的に表現したものです。曼荼羅にはさまざまな種類のものがあります。基本となるのは上記でも書いた、四種曼荼羅です。
大曼荼羅・・・仏の姿をそのまま描いて仏の世界を表現したもの
三昧耶曼荼羅・・・仏をシンボルとして置き換え表現したもの
法曼荼羅・・・文字で抽象的に書かれることが多く、仏教の真理・仏の智慧を表現したもの
羯磨曼荼羅・・・大日如来以外が女尊で描かれた、業(カルマ)を表現したもの
また、真言密教で用いられる曼荼羅には、胎蔵界(仏の位置を表したもの)と金剛界(仏の法力を表したもの)の二つがあります。
胎蔵曼荼羅・・・胎蔵界を代表する経典『大日経』をもとに悟りの世界を表現したもの
金剛界曼荼羅・・・経典『金剛頂経』をもとに大日如来の智慧や道徳の世界を表現したもの
この二つを両界曼荼羅と言います。
徳島県での真言宗葬儀の流れ
真言宗の葬儀は、故人を大日如来の密厳浄土に送り出すためのものです。通夜・葬儀では、般若心経・般若理趣経の他、諸仏の真言を唱えられます。
お通夜では末期の水を取ります。湯呑など小さな器に水を張り、樒の葉や脱脂綿を巻いた箸などに水を取り、故人の口元に当てていきます。
末期の水は通夜式の中で焼香のあとに取る場合と、通夜式終了後に取る場合があります。導師によってその流れが違いますので通夜式が始まる前に確認しておきます。
葬儀式では、儀式として故人を仏弟子にするために授戒を行いますが、この時に与えられるのが戒名です。
終盤になると引導と呼ばれる儀式を行い、故人を仏の世界に導きます。
また、真言宗の焼香は三回焼香です。その際、抹香は額に押し頂くようにします。
真言宗では一般的に3本の掛け軸を使用します。十三仏・不動明王・弘法大師の3本です。
徳島県では、通夜・葬儀ともに本尊として十三仏をかけ、通夜では故人の頭元に不動明王をかけるのが一般的です。
しかし県南では頭の向きは関係なく、通夜・葬儀は本尊として十三仏をかけ、向かって右に不動明王を、向かって左に弘法大師をかけることが多いのです。法要では向かって右が弘法大師、向かって左が不動明王となるようにかけかえます。
基本的な流れは一般的なものと同じですが、地域性が出る部分もあるので式の流れや作法について不安であれば会館スタッフに聞いてみるとよいでしょう。
まとめ
空海(弘法大師)によって開かれた大日如来を本尊とする真言宗。
その教えや歴史を知り、さらに馴染みが深くなったのではないでしょうか。ぜひ、葬儀を執り行う時、参列する際の参考にしてみてください。
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